今はフリーランスって言葉が主流だけど、少し前は独立起業みたいな言われ方をしていた。IT企業クラウドワークスやランサーズなどによる働き方改革で個人でも法人と取引したり、副業で給料以上に月収を稼ぐ小金持ちが増殖した。

しかも「好きなことで生きる」が国民的スローガンにでもなったかのように書店やブログでも目にする機会が多くなって来たが、「会社にとらわれない自由な生き方」という価値観が若い世代はもちろん、4050代にも一般化してきている。

しかし、フリーランスという甘い言葉に寄せられて詐欺まがいのビジネスがうまれてることもまたしかり。「YouTubeで稼ぐ!」やら「クラウドワークスで給料以上稼ぐ!」やら「在宅OK単純作業で月収20万円!」とか。情報商材まがいのものも多数見受けられる。

フリーランスは、働き方のカテゴリとしては確かに自由度が高く、WeWorkのようにシェアオフィスが増えている今、人気が高くなるのも当然だろう。でも当然、万人がうまくいくわけがなく注意も必要だ。

フリーランスの天国

なにより時間と場所の制約を受けないことだろう。特定の会社の事業所に毎朝同じ時間に出社する必要がない。「通勤」という概念がまずない。しかも、重要視されるのはなによりも「成果」だ。昼に起きて1時間だけ仕事して午後はスタバで読書したり、遊びにでかけるもOK成果さえ出せば。

企業の就労規則としても、裁量労働(会社が求める成果を出せば何時に出社して何時に帰ってもOKな制度)を取り入れてるところも増えて来ている。それでも、通勤前提である。その点では、やはり場所の制約を受けないフリーランスはメリットだろう。

そして、最大のメリットは収入面。基本的には、成果報酬だから結果を出せればサラリーマンとして受け取る固定給よりもはるかに多いな金額を稼ぐことができるのは魅力的だ。やればやるだけ自分にお金という形で褒美が入ってくるので、収入面でさらに上を目指したい人は、自由な環境でありながらもストイックに働くことでより満足度の高い収入が得られる。

フリーランスの地獄

場所、時間の制約はないが、やはり収入面だろう。知り合いのエンジニア
S
さん(5歳上)は月収80万円の年収約1,000万円でけっこういけてる人材だった。需要が高いトレーディングシステムを作る会社のエンジニアだったので、「これは独立だ!」と奮起したのだろう。Sさん2年前にフリーランスとして起業した。受託のほとんどがクラウドワークスのサイトで、月にいくつか依頼は入っていたらしい。

しかし、単価がめちゃ安い。システム1つ作っても値段を叩かれて3万円~5万円だったらしい。サラリーマンの副業なら、まあまあいい値段に思うかもしれない。が、しかし、会社員時代と同じ80万円を稼ごうと思ったらどうだろう?

80万円÷1件あたりの報酬5万円=16件の受注を獲らなくてはならない。

「そこは気合いでいけるだろ!」と思ったかもしれないが、小学生にもならない娘が二人いて、自宅で働くとしたらそりゃもう地獄でしょ。土日もPCの前で作業しなきゃだし、深夜対応は当たり前。システムの不具合があればメンテナンス作業もしなきゃいけない。いや、、地獄でしょ、、Sさんは結局心折れて、今では普通に九段下のシステム会社に転職して会社員として働いている。

フリーランスでやるなら太い客がいないときつい。

これからフリーランスを始めようと思っている人、すでにフリーランスで活動している人にとっては、クラウドワークス、ランサーズといった、クラウドサービスを利用して、発注してくれる法人を探している人が多いだろう。でも、基本的に個人の副業でやってるユーザーがほとんどなので、はっきりいって「質が低い!」自分もHPデザインを依頼したことがあるが、まあひどかった。テキスト制作も誤字脱字あるし、文章下手だし、まあひどかった。

だから、報酬単価がめちゃ安い。発注側も質をそこまで求めてなかったりするし、とにかく安く叩く気まんまんだから、安値で受注してくれる人を探す。そうすると、受注ほしさに業務の安売りが一斉に始まる。これじゃまともに稼ぐのはきつくて当然だよね。

対策1:最初は安売り、でもだんだん値上げ作戦

まず実績がない人は安売りでもなんでも仕事を発注してもらわなきゃ報酬は0円。だからまず安売りでも受注を格闘する。そして品質を担保することは必至。さらに欲を言えば「あ、この人納期守ってしっかり仕事してくれるし、クオリティ高いな」と思わせたら勝ったようなもんだ。

発注側も、定期的にクラウドサービスを利用する企業なら、毎回発注先を探すのはだるい。どうせなら、固定で安定して質の高い納品物を担保してくれる人に毎回お願いしたくなるのは当然だ。そこを狙わない手はない。

対策2:そもそもフリーランスとして働く前に、骨太の受注先を確保しておく。

今の会社でもいいし、取引先でもいいわけだけど、自分がフリーランスで働く旨を伝えて、取引を継続してもらうのが一番てっとり早い。退職した翌日から仕事が舞い込んでくる。しかも信頼されてるなら定常的に仕事ももらえるので収入面も安定しやすい。

でもこれには注意が必要で、職場から仕事を盗んだと思われないようにすることだ。トラブルになると最悪訴えられるのでご注意を。担当者と仲良くなってこっそり受発注の約束して会社を辞めた人間も過去にいた。でも大抵、そういったことするのって、会社に遅かれ早かれバレるもので、法人レベルでトラブルになりがち。で、担当移動させられたり、辞めたりで仕事も収入も一気に0円になりがち。しかも、悪評がついて今後の新規営業にも影響がでたら、もう終わりだろう。

フリーランスの夢は計画的に

「勢いが大事じゃ!」と辞表を叩きつけたい気持ちもわかる。でも、楽な業種ではない。結局一部の優秀で能力の高い人材が高額な案件をとられてしまうことが多い。しかも、一時期よくても、さらに安くて質が高い人材が出て来たときに、あっさり首でなく、案件を切られてしまうのがフリーランスの怖いところだ。

誤解してほしくないけど、フリーランスに否定的なわけではない、ただし現実をよく理解した上で、自分の実力を過信せず、自分の情熱を持てる仕事ができる環境を選択してほしいなとは思う。じゃないと、Sさんのように、1年後には、また普通の会社員に逆戻りになっているかもしれない。しかも、前職の給料よりもさらに低い年収で雇われる前提で。メリット・デメリットはしかり、家族の理解や、本当に自分がやりたいこと、実現したいライフスタイルやビジネスワークを今一度見直した上で、フリーランスとして独立するか、今の会社に残ってスキルアップに勤めるか検討してみよう。フリーランスは選択の1つであって、絶対そうすべきものでもないし、働き方の選択の1つ。自分にあった働き方を追求して、その答えがフリーランスであればあとは自分の努力次第だと思う。まずは自分のやりたいこと、実現したい働き方のスタイルを見つめ直してみよう。